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円キャリー取引の巻き戻し懸念が浮上、モルガン・スタンレーは「過度な悲観は不要」と分析

Summary
円の急騰を受け、新興国資産を巻き込む大規模な円キャリー取引の解消懸念が強まっている。しかし、モルガン・スタンレーは、市場のボラティリティが急上昇しない限り、取引の基盤は強固であるとの見方を示した。
円が対ドルで急伸し、低金利の円を借りて高利回りの新興国資産に投資する「円キャリー取引」が大規模に巻き戻されるとの懸念が市場で強まっている。しかし、モルガン・スタンレーは9月8日付のレポートで、市場全体のボラティリティが急上昇しない限り、キャリー取引の基盤は依然として強固であり、過度な悲観は不要との見解を示した。
円急騰の背景と市場の懸念
外国為替市場では最近、ドル円相場が一時1ドル=153円を割り込み、約7ヶ月ぶりの円高水準を記録した。月初に付けた約40年ぶりの円安水準(164円近辺)からは、累計で約7%の上昇となっている。
この背景には、日本銀行が9月にも利上げに踏み切るとの市場観測が急速に高まっていることがある。金利スワップ市場では、9月の利上げ確率が98%織り込まれる状況だ。円高の進行は、巨額の資金が動く円キャリー取引のポジション解消を促し、新興国資産の急落を引き起こす可能性があるとして、投資家の間で警戒感が広がっている。
モルガン・スタンレーの分析:キャリー取引の耐性は依然高い
モルガン・スタンレーのグローバル為替・新興国市場戦略責任者であるジェームズ・ロード氏が率いるチームは、レポートの中で「円高という単一の要因だけで新興国のキャリー取引が損なわれる可能性は低い」と指摘。真のトリガーは、市場全体のボラティリティを押し上げるような別の要因が出現することだと分析している。
同行は、キャリー取引のパフォーマンスを左右する重要な変数として、以下の3点を挙げ、いずれも引き続きポジティブな見方を維持している。
- 世界経済の成長見通し
- 世界的な株式市場の動向
- 主要新興国のファンダメンタルズ
同行は、新興国が持つ「各国の堅調なファンダメンタルズ、高水準のキャリー収益、そして強固な世界経済の成長モメンタム」が、投資家を惹きつけ続けると見ている。
Ad耐性を示すデータ
この見方を裏付けるデータとして、同行は新興国通貨の動向を挙げている。例えば、ブラジルレアルとコロンビアペソは直近で対円では下落しているものの、対米ドルでは上昇している。これは、新興国資産の全面的な売りではなく、円の独歩高が主因であることを示唆している。
また、投資家が資金調達通貨を円だけでなくユーロやスイスフランにも多様化させているため、円の動向がキャリー取引全体に与える影響は過去に比べて低下しているとも指摘した。
残存するリスクと投資家への示唆
モルガン・スタンレーは楽観的な見方を示しつつも、リスクが完全に消散したわけではないと警告する。過去には、円の急騰がキャリー取引の大規模な巻き戻しを誘発し、世界的な株価急落につながった例がある。もし円高がさらに加速すれば、市場の緊張が急速に広がる可能性は否定できない。
特に、AI関連株など混雑した取引(クラウデッド・トレード)は、強制的なポジション解消の際に真っ先に売却対象となる可能性がある。流動性が高く、利益が出ている資産が狙われやすいためだ。
同行は結論として、金利差による収益と市場のリスク選好が維持される限り、円高だけで資金フローが劇的に変化するとは考えにくいと分析。「新興国市場については引き続き押し目買いを推奨する」とし、良好なファンダメンタルズと成長性が投資家の関心を維持するだろうと締めくくった。