Story
バブ・エル・マンデブ海峡の地政学リスク:世界貿易の要衝が直面する脅威

Summary
イエメンのフーシ派による攻撃が激化するバブ・エル・マンデブ海峡は、アジアと欧州を結ぶ海上輸送の要衝であり、その混乱は世界のサプライチェーンとエネルギー価格に深刻な影響を及ぼす。
イランの支援を受けるイエメンの武装組織フーシ派による商船への攻撃が激化し、世界の海運における最重要チョークポイントの一つであるバブ・エル・マンデブ海峡の戦略的重要性が改めて浮き彫りになっている。この海峡の混乱は、世界のサプライチェーンとエネルギー市場に直接的な影響を及ぼす。
海上交通の要衝
「涙の門」とも呼ばれるバブ・エル・マンデブ海峡は、紅海の南端に位置し、アラビア半島のイエメンとアフリカ大陸のジブチ、エリトリアを隔てている。アジアと欧州をスエズ運河経由で結ぶ最短航路の南側の玄関口であり、世界で最も交通量の多い航路の一つだ。
海峡の最も狭い地点の幅は約29km(18マイル)しかなく、イエメン領のペリム島によって航路が往路と復路の2つに分断されている。この地理的条件により、航行する船舶はフーシ派が拠点とするイエメン沿岸からの攻撃に対して脆弱となる。
世界貿易への影響
この海峡は、アジアから欧州へ向かう工業製品や、中東からアジアへ向かう原油・液化天然ガス(LNG)など、世界の海上コンテナ輸送やエネルギー輸送に不可欠なルートとなっている。データ分析会社Kplerによると、6月には世界の石油生産量の約7%に相当する量がこの海峡を通過した。
Ad海峡が封鎖または危険な状態に陥ると、船舶はアフリカ南端の喜望峰を回る迂回航路を余儀なくされる。これにより、航行日数が数週間延長され、燃料費や保険料を含む運航コストが大幅に増加する。これは最終的に、世界的なインフレ圧力となる可能性がある。
フーシ派の脅威と市場の反応
2023年後半から、フーシ派はパレスチナとの連帯を掲げ、紅海南部とバブ・エル・マンデブ海峡で商船への攻撃を繰り返している。これを受け、マースク(Maersk)、ハパックロイド(Hapag-Lloyd)などの大手海運会社や、石油メジャーのBP、タンカー船社のフロントライン(Frontline)などが相次いで紅海経由の運航を見合わせ、迂回航路を選択した。
この事態は、海上運賃の急騰と輸送時間の大幅な遅延を引き起こした。フーシ派が海峡の支配を強めることは、彼らを支援するイランの地政学的な影響力を高めることにもつながり、すでに緊張が高まっているホルムズ海峡と並び、世界のエネルギー安全保障にとって重大なリスクとなっている。