Story
供給不安でも原油100ドル割れ、市場を抑制する複数要因

Summary
中東の供給障害にもかかわらず、ブレント原油が1バレル100ドルを下回って推移している。非OPEC諸国の増産や中国の需要減速が価格の上昇を抑制している。
米国とイランの紛争激化によりホルムズ海峡などからの原油輸出が大幅に減少しているにもかかわらず、国際的な指標であるブレント原油価格は1バレル100ドルを下回って推移している。非OPEC諸国の増産や世界最大の輸入国である中国の需要鈍化など、複数の要因が価格の上昇を抑えている。
供給減を相殺する代替ルートと増産
中東の産油国は、地政学的リスクの高まりに対応するため、代替ルートの活用を進めている。アルガス社によると、中東からの原油出荷量は紛争前の日量1800万バレルから約1100万バレルに減少した。しかし、ホルムズ海峡を迂回する船舶間での石油移送(STS)や、エジプトのシディ・ケリル港など代替港からの輸出が増加し、供給の完全な途絶を回避している。
一方で、OPECに加盟していない産油国が供給不足の一部を補っている。ライスタッド・エナジー社は、米国、カナダ、ガイアナなどの非OPEC産油国が、今年合計で日量1.4百万バレルの増産を行うと予測している。また、ロシアの原油輸出も、国内製油所への攻撃による処理能力低下を背景に、高水準を維持している。
中国の需要減速と潤沢な備蓄
供給面の不安を和らげている最大の要因は、需要側の弱さだ。特に世界最大の原油輸入国である中国の景気減速が市場の重しとなっている。ライスタッド・エナジー社によると、第3四半期の世界の需要破壊(価格高騰による需要の減少)は日量350万バレルに達し、その半分以上を中国が占めるという。
Ad中国は電気自動車(EV)への移行や石炭由来の化学製品利用を推進しており、石油需要が構造的に変化している。同国の海上輸送による原油輸入量は、2月の日量1100万バレル超から7〜8月には日量700万バレルまで減少した。また、ケプラー社の推計で11億7000万バレルに上る中国の膨大な石油備蓄も、市場に安心感を与えている。
現物市場の逼迫と今後の見通し
先物市場が落ち着きを見せる一方で、現物(フィジカル)市場は逼迫感を示している。ロイターのデータによると、11月積みのドバイ原油やオマーン原油のスポットプレミアムはドバイ相場に対し1バレル19〜20ドルまで急騰しており、短期的な供給不足を反映している。アルガス社のチーフエコノミストは「特にディーゼル市場は極端な品薄状態にある」と指摘する。
こうした状況を受け、一部の金融機関は価格見通しを引き上げている。モルガン・スタンレーは第4四半期のブレント原油価格が平均で100ドルに達すると予測。ゴールドマン・サックスも、中東の輸送障害が来年まで続くとみて、2026年12月限のブレント原油予測を85ドルに引き上げた。