Story
米国債・ドルに売り圧力、「米国売り」再燃か FRBへの不信感と異例の円買い介入で

米連邦準備制度理事会(FRB)の政策運営や、米財務省による異例の為替介入支持といった一連の動きを受け、世界の債券・為替投資家の間で「米国売り」の取引を再開すべきかどうかの議論が活発化している。米国の政策が再び予測困難になっているとの懸念から、米国債とドルに対する従来の選好を見直す動きが広がっている。
背景:FRBと財務省の政策転換
市場の懸念を煽る主な要因は二つある。一つは、ウォッシュ議長率いるFRBのインフレ抑制へのコミットメントに対する疑念だ。市場では、FRBがインフレに対して後手に回るリスクが意識されている。
もう一つは、ベセント米財務長官が日本の円買い介入を支持する姿勢を示したことだ。日米が協調して為替介入を支援するのは約30年ぶりとなる。今回の介入は米国債市場への影響を避けるためユーロを介して行われたと報じられているが、それでもドルへの下押し圧力となる可能性は否定できない。
市場への影響と投資家の見方
こうした政策の不確実性を背景に、市場では米国資産からの資金流出の兆候が見られる。
Ad- 米国債市場: 長期金利の指標となる30年物米国債の利回りは一時5%を超え、2002年以来の高水準を記録した。投資家が長期債保有に求める上乗せ金利(タームプレミアム)も2013年以来の高水準に達しており、米国の財政状況への懸念が価格に反映されている。
- 為替市場: 通常、金利上昇はドル高要因となるが、足元ではドルが主要10カ国(G10)通貨のほぼ全てに対して下落している。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は6月の高値から約2%低下した。
GAMAアセットマネジメントのラジーブ・デメロ氏は、政策の不確実性を理由に米国債とドルを売却しているとし、「投資家はドルと米国債のイールドカーブに政策リスクを織り込み始めている」と指摘する。
「米国例外主義」への懐疑論
一方で、米国株市場はハイテク株主導でS&P 500指数が史上最高値を更新するなど底堅さを維持しており、米国資産への信認が完全に失われたわけではない。ピムコ(PIMCO)のストラテジスト、ロトフィ・カルイ氏は、米国債やドルに対する大規模な協調的売りは見られないと指摘し、米国資産は依然として海外投資家にとって魅力的だとの見方を示した。
しかし、米国の巨額な財政赤字を賄うための国債発行ペースに、海外からの資金流入が追いついていないという構造的な問題も存在する。米財務省は当四半期の借り入れ予想額を7390億ドルに引き上げた。ラザードのチーフ市場ストラテジスト、ロナルド・テンプル氏は「安全資産としての米国への信頼という背景が変化しつつある。今後数年でドル安が再開するだろう」と予測している。