Story
中東情勢緊迫化、原油タンカーが喜望峰経由に 航海日数1カ月・コスト250万ドル増

Summary
ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の封鎖リスクを受け、サウジアラビア産原油をアジアへ輸送するタンカーがアフリカ周りの長期航路を余儀なくされている。これにより、航海日数が約1カ月、コストが1隻あたり250万ドル以上増加しており、原油価格や供給網への影響が懸念される。
ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡という2つの主要な原油輸送路が地政学的リスクに晒される中、アジア市場向けの原油タンカーはアフリカ大陸を迂回する大幅なルート変更を迫られている。この結果、航海期間が約1カ月延び、1隻あたりの輸送コストが250万ドル以上も増加する事態となっている。
地政学リスクが原油輸送路を直撃
ロイター通信によると、イランおよびその支援を受けるフーシ派武装勢力による妨害行為を受け、サウジアラビアの主要な石油輸出ルートであるホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の通航が困難になっている。サウジアラビアはこれまでも、イランとの緊張が高まった際にペルシャ湾(ホルムズ海峡)から紅海(バブ・エル・マンデブ海峡)へ輸出ルートを一部移してきた。
しかし、今週に入り紅海でフーシ派による船舶への攻撃が発生したことで、この代替ルートの安全性も揺らいでいる。これにより、多くのタンカーがスエズ運河を経由し、さらにアフリカ南端の喜望峰を回ってアジアへ向かうという、はるかに長い航路を選択せざるを得なくなっている。
航海日数とコストの急増
このルート変更は、輸送時間とコストに直接的な影響を及ぼす。主要な顧客が米国や欧州からアジアに移った現代において、この迂回ルートはサウジアラビアにとって数十年来経験のない規模の物流上の挑戦となる。
AdKplerおよびLSEGの海運データによると、具体的な影響は以下の通りだ。
- 航海期間: サウジアラビアのヤンブ港から台湾までの航海は、バブ・エル・マンデブ海峡経由で通常19日だが、スエズ運河と喜望峰を回るルートでは48日に及ぶ。
- 燃料費: LSEGのデータに基づくロイターの試算では、燃料費だけで従来の約126万ドルから約287万ドルへと倍増する。
- 運河通航料: LSEGによれば、スエズ運河の通航には別途100万ドルの費用が発生する。
市場への影響と物流上の課題
輸送コストの急騰は、最終的にアジアの買い手にとっての原油価格上昇につながる可能性があり、世界のエネルギー供給網の脆弱性を浮き彫りにしている。さらに、物流面でも課題は多い。
Energy Aspectsの分析では、大型タンカーは喫水制限のため、スエズ運河を半載の状態で通過し、地中海で残りを積み込む必要があると指摘している。この対策として、紅海と地中海を結ぶ「スメド・パイプライン」の活用が考えられる。このパイプラインは日量最大250万バレルの輸送能力を持つが、これはサウジアラビアの総輸出量である日量約700万バレルの一部をカバーするに過ぎず、根本的な解決には至らない。