Story
欧州ガス価格が急騰、2023年以来の高値更新 イラン情勢緊迫化でLNG供給懸念

Summary
米国とイランの軍事衝突拡大を受け、欧州の天然ガス価格が急騰し、指標となるオランダTTFは2023年以来の高値を記録した。ホルムズ海峡経由のLNG供給に障害が生じるリスクが市場で強く意識されている。
米国とイランの軍事衝突が拡大していることを受け、欧州の天然ガス価格が9日に急騰した。指標となるオランダTTFの先物価格は一時、1メガワット時(MWh)あたり79ユーロに達し、2023年以来の高値を更新。中東からの液化天然ガス(LNG)供給が滞るとの懸念が強まっている。
## 中東情勢の緊迫化が背景
価格高騰の直接的な引き金となったのは、中東における地政学リスクの急激な高まりだ。イランの支援を受けるフーシ派がサウジアラビアの複数都市を攻撃したほか、米軍がイランの石油タンカーを攻撃、イランもヨルダンにある米軍基地にミサイル攻撃を行うなど、軍事的な応酬が激化している。
この紛争拡大は、世界のLNG輸送量の約20%が通過する重要な海上交通路(チョークポイント)であるホルムズ海峡の航行に直接的な脅威をもたらす。市場では、主にカタールから産出されるLNGの供給が滞るリスクを織り込む動きが加速しており、欧州の電力会社はアジアの買い手との間で、大西洋流域からの代替供給をめぐる獲得競争を強いられている。
## 低水準のガス備蓄が懸念を増幅
今回の地政学的ショックは、欧州のエネルギー安全保障が脆弱なタイミングで発生した。ガス・インフラストラクチャー・ヨーロッパのデータによると、欧州の地下ガス貯蔵施設の貯蔵レベルは容量の約64%にとどまっており、過去5年間の季節平均を下回っている。
Ad今夏の猛暑によるガス火力発電の需要増加、ノルウェーの海底パイプラインのメンテナンス継続、カタールからのLNG出荷遅延などが重なり、冬に向けた在庫の積み増しが思うように進んでいない状況が、供給不安をさらに増幅させている。
## 市場への影響とECBへの圧力
天然ガス価格の急騰は、1バレルあたり100ドルに迫る原油価格と相まって、欧州の製造業や小売サプライチェーンにおけるコストプッシュ型のインフレ懸念を再燃させている。エネルギーコストの上昇は、今週木曜日に金融政策決定を控える欧州中央銀行(ECB)にとっても難しい舵取りを迫るものだ。
エネルギー価格を主因としてユーロ圏の消費者物価指数(CPI)が再び加速する中、金融市場はECBが25ベーシスポイントの利上げを決定することを完全に織り込んでいる。これにより、欧州の借入コストは引き続き高水準で推移する見通しだ。