Story
ジェット燃料高騰、米航空会社で明暗分かれる——製油所保有のデルタが優位に

Summary
原油価格を上回るペースでジェット燃料費が高騰する中、独自の製油所を持つデルタ航空が利益を確保する一方、多額の負債を抱える他社は深刻なコスト圧力に直面しています。クラックスプレッドの拡大が各社の財務状況に与える影響を分析します。
ジェット燃料価格が原油を大幅に上回るペースで高騰しており、米国の航空業界で勝ち組と負け組が明確に分かれつつあります。この背景には原油と石油製品の価格差である「クラックスプレッド」の拡大があり、独自の対策を持つデルタ航空が他社を圧倒する一方、財務的に脆弱な航空会社は深刻な圧力に晒されています。
見過ごされがちな「クラックスプレッド」の脅威
原油価格の上昇が航空会社のコストを圧迫するのは周知の事実ですが、現在の問題はそれ以上に深刻です。ドイツ銀行の分析によると、原油価格が年初来で約50%上昇したのに対し、ジェット燃料価格は100%〜125%という2倍以上のペースで急騰しています。この乖離は、製油所の精製能力の逼迫を背景に、原油とジェット燃料の利ざや(クラックスプレッド)が拡大しているために生じています。
このコスト増は業界全体に年間460億ドル以上の構造的な負担増をもたらしており、かつて主流だった伝統的な燃料ヘッジプログラムをほとんどの航空会社が実施していない現在、その影響は直接的に収益を直撃します。
独自の製油所が強みとなるデルタ航空
この状況下で、デルタ航空(DAL)は業界で唯一無二の優位性を有しています。同社が保有するモンロー・エナジー社の製油所が、クラックスプレッドの拡大を逆手に取る「構造的ヘッジ」として機能しているためです。スプレッドが拡大すればするほど、競合他社がコスト増に苦しむ一方で、デルタの製油所部門は利益を上げることができます。
Ad2022年の原油価格高騰時、この製油所は約7億8500万ドルの燃料費を節約し、7億7700万ドルの営業利益を生み出しました。エド・バスティアンCEOは、クラックスプレッドが最大化していることを理由に、2026年第2四半期だけで製油所が約3億ドルの利益を同社にもたらすとの見通しを示しています。もちろんデルタ航空も全体では約40億ドルの燃料費増を見込んでいますが、他社にはない強力な緩衝材を持っていることは明らかです。
価格転嫁力と財務の脆弱性が明暗を分ける
デルタに次ぐポジションにあるのがユナイテッド航空(UAL)です。同社の強みは、旺盛な需要を背景とした価格決定力にあります。スコット・カービーCEOは「全部門で非常に強い需要」を理由に、2026年第4四半期には燃料費の上昇分を100%運賃に転嫁できると明言しています。しかし、336億ドルを超える巨額の負債は、ひとたび需要が後退した場合のリスク要因となります。
一方で、複数の航空会社が極めて脆弱な状況に置かれています。
- アメリカン航空(AAL): 業界最大となる357億ドルの負債を抱え、純利益率はほぼゼロ(2025年度見通し0.2%)です。すでに2度の業績下方修正を発表しており、コスト増を吸収する余力はほとんどありません。
- ジェットブルー航空(JBLU): 燃料高騰以前から3期連続の赤字経営が続いており、フリーキャッシュフローもマイナスです。株価の変動性を示すベータ値は1.70と高く、市場からは既に高リスク銘柄と見なされています。
- フロンティア航空(ULCC): 最も深刻な状況にあります。ベータ値は2.57と極めて高く、原油関連のニュースに最も敏感に反応します。粗利益率は2.8%まで落ち込み、EBITDAもマイナスに転落しており、燃料費のさらなる上昇は経営の根幹を揺るがしかねません。