Story
トランプ氏、株価を政権の「成績表」に 国民の半数近くは恩恵外か

トランプ米大統領は、自身の政権運営の成功を測る指標として、ウォール街の株価動向をますます重視する姿勢を鮮明にしている。記録的な株価を政策の成果の証しとする一方、多くのアメリカ国民は依然として高い生活費に苦しみ、そもそも株式を保有していないという現実がある。
株価を重視する政策とメッセージ
トランプ大統領は、自身の政策を正当化するために株価の上昇を頻繁に引用している。イランとの対立から世界的な関税措置、国内の重要法案に至るまで、あらゆる場面で株高を「国が繁栄しているシグナル」として強調してきた。
政権は国民の株式市場への参加を促す政策も打ち出している。主な政策は以下の通りだ。
- 新生児向けに政府が資金を提供する投資口座「トランプ口座」の創設。
- 「トランプIRA」と呼ばれる制度に加入した労働者の401(k)拠出金に対し、最大1,000ドルを政府が上乗せする計画。
さらに政権は、インテルへの株式出資やUSスチールにおける「黄金株」の取得、NvidiaやAMDとのレベニューシェア契約など、大手企業との取引を通じて市場への直接的な関与を深めている。
恩恵の偏りと「K字型経済」
Adしかし、こうした株価中心のアプローチは、アメリカ国民の大部分を見過ごしていると経済専門家は指摘する。ギャラップ社の世論調査によると、米国民の約4割は株式を一切保有していない。さらに、最も裕福な1%が米国の資本市場投資の半分以上を所有しているという。
この状況は、富裕層の消費が市場を支える一方で、中・低所得者層が取り残される「K字型経済」と呼ばれる格差を浮き彫りにしている。下位半数の世帯の資産は不動産や耐久消費財に結びついていることが多く、株価の上昇が短期的な家計に与える影響は限定的だ。
米経済は2025年に2.1%のGDP成長を遂げ、平均時給も3.5%増加するなど、全体としては安定している。しかし、最近のインフレが消費者の景況感を悪化させている側面もある。
専門家から見たリスクと利点
トランプ大統領の市場重視の姿勢は、専門家の間でも評価が分かれている。批判的な意見としては、市場の急落を受けて通商政策の一部を撤回した例など、重要な政策判断が株価に左右されかねないという懸念がある。リベラル系シンクタンクGroundwork Collaborativeのアレックス・ジャケス氏は、このアプローチでは企業の利益が危機に瀕したときにしか社会の問題が注目されないと警鐘を鳴らす。
一方で、保守派の経済学者スティーブン・ムーア氏は「完璧な相関関係ではないが、企業の株価はその健全性を示す重要な指標だ」と述べる。また、Wedbush証券のダン・アイブス氏は「大統領が常に市場に注目していることで、投資家は安心して眠れる。自然なガードレールのようなものが生まれる」と肯定的に評価している。