Story
中国、ヘリウム輸出を一時停止 中東情勢緊迫化で国内供給を優先

中国政府は7月10日、半導体製造に不可欠なヘリウムの輸出を即時、一時的に禁止すると発表した。中東での軍事的紛争の再燃が世界的な供給不足を引き起こすとの懸念が高まる中、国内の供給を確保する狙いがある。
国内供給の確保が狙い
今回の措置は、米国とイラン間の緊張が再び高まっていることを受けたものだ。ヘリウムは半導体製造における熱管理に不可欠であり、以前の中東紛争の際にも供給不足が発生し、世界のハイテク企業に影響が及んだ。
政策調査会社Trivium Chinaのアナリスト、コリー・コームス氏はロイターに対し、「今回の輸出禁止は、イランを巡る紛争が再燃した後、国内供給を守るための明確な動きだ」と指摘した。中国はヘリウム需要の約85%を輸入に依存しており、供給網の寸断に対して脆弱な立場にある。
近年、中国のヘリウム輸入の半分以上を占めてきたのはカタールだが、同国は世界の3分の1を供給する主要生産国でもある。イランによる過去の攻撃でカタールからの輸出が滞った経緯があり、地政学的リスクが供給に直結する構造となっている。
世界市場への影響は限定的か
一方で、今回の輸出禁止が世界のヘリウム市場に与える影響は限定的との見方もある。コームス氏は、「中国からのヘリウム輸入に特に依存している国は把握していない」とし、「輸出禁止はわずかな影響を及ぼすかもしれないが、大規模な不足や価格の急騰を引き起こすことはないだろう」と分析する。
Ad中国企業は通常、余剰分を他のアジア市場に販売する形でヘリウムを輸出してきた。今回の禁止措置は、中東情勢の悪化による供給リスクと地域的な価格上昇を見越した国内企業による利ざや目的の輸出を防ぎ、国内価格の急騰を抑えるための予防的措置と考えられる。
半導体製造におけるヘリウムの重要性
ヘリウムは、特殊な天然ガス田から抽出される希少なガスであり、他の工業プロセスで迅速に製造することはできない。半導体製造工程では、以下の多岐にわたる用途で使用される重要な物質である。
- ウェハーの冷却
- プラズマエッチング
- 化学気相成長(CVD)および原子層堆積(ALD)
- リソグラフィ工程のサポート
中国は近年、AI(人工知能)産業の育成に力を入れており、国産半導体の需要が急増している。今回の措置は、燃料や肥料などで過去に実施された輸出規制と同様に、国内の重要産業を保護するために重要物資の流出を管理する北京政府の姿勢を改めて示すものとなった。