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米損保大手5社を比較:市場軟化で問われる引受規律

米国の損害保険(P&C)セクターは、7年間にわたる保険料率の積極的な引き上げ(ハードマーケット)を経て、現在は価格設定が軟化する局面(ソフトマーケット)へと転換しています。この変化は、これまで保険料の値上げによって脆弱な引受体制を補ってきた企業を浮き彫りにし、厳格な規律を持つ企業が優位に立つ新たな競争環境を生み出しています。
市場環境の変化と3つの推進力
現在の損害保険市場は、主に3つの力によって形成されています。第一に、自然災害による損失が歴史的な高水準に近い中で、不動産保険の料率が軟化し、再価格設定の緊急性が低下していること。第二に、損害賠償額の高額化といった「社会的インフレ」により、賠償責任保険のコストが上昇し続けていること。そして第三に、保険料収入の規模ではなく、損失を抑制する規律、すなわち「アンダーライティング・アルファ」が新たな差別化要因となっていることです。
主要5社の業績比較
セクターを代表する専業大手5社の業績には、各社の戦略の違いが明確に表れています。以下は、Investing.comがまとめた各社の主要指標です。
- Chubb (CB): 時価総額$131.9B、PER 11.8倍、PBR 1.7倍。安定した優良企業。
- Progressive (PGR): 時価総額$128.5B、PER 10.9倍、PBR 3.7倍。高いROEを誇るが、利益率への逆風も。
- Travelers (TRV): 時価総額$78.9B、PER 9.6倍、PBR 2.4倍。好調な業績は株価に織り込み済み。
- Allstate (ALL): 時価総額$65.4B、PER 4.9倍、PBR 2.0倍。割安だが利益率にリスク。
- AIG (AIG): 時価総額$39.9B、PER 13.3倍、PBR 1.0倍。ディープバリューだがROEは低い。
収益面では、Progressiveが2021年の477億ドルから2025年には876億ドルへと4年間で倍増近い成長を遂げたことが際立っています。一方、AIGは非中核事業の売却により、収益が518億ドルから266億ドルへと減少しました。自己資本利益率(ROE)では、AllstateとProgressiveが2022年の不振からV字回復を遂げ、それぞれ42.3%と40.4%(2025年度)を達成しています。
Ad市場センチメントと今後の見通し
2026年第2四半期の決算は、セクター内で明暗が分かれました。Travelersは1株当たり利益(EPS)が市場予想のほぼ2倍となり株価が急騰しましたが、年初来で31.8%上昇した株価は過熱感も指摘されています。一方、Allstateは良好なコンバインド・レシオを報告したものの、UBSとHSBCは7月に投資判断を「中立」に引き下げ、現在の収益性が持続不可能である可能性を警告しました。
投資家にとっての論点は以下の通りです。
- 強気材料: ハードマーケット時の料率改定効果の持続、高金利環境による運用収益の追い風、テクノロジー活用によるコスト効率の改善。
- 弱気材料: 価格軟化による利益率の圧縮、賠償責任保険における構造的な社会的インフレ、一部企業で前年を上回る大災害損失。
Investing.comの分析によれば、Progressive (PGR)は、40%を超える高いROEを維持しながらPERが10.9倍と、魅力的な価格で質の高い投資機会を提供していると指摘されています。ただし、同社の主力である個人向け自動車保険事業は、利益率正常化の影響を最も受けやすいというリスクも抱えています。また、AIG (AIG)はPBRが1.0倍と明確な割安株ですが、ROEが7.4%にとどまっており、事業再生がまだ途上にあることを示唆しています。